昨年だったか、風景写真家・富田文雄氏の写真集をいただいた。
四季折々の変化に富んだ日本各地の里山の風景に心が洗われる心地がしたが、その中に熊本の写真がふたつあった。 ひとつは阿蘇の夕景で、神々しい阿蘇谷の風景を、やまなみハイウェイの城山展望所から撮ったものと思われる。
もうひとつは秋の甲佐町の田園風景を撮ったものとのことだけど、場所がわからない。
そこで、この写真を撮ったロケーションを探しに行くことにした。 午後1時過ぎからクロモリロードバイクで出発し、健軍商店街を通り、秋津から、
嘉島町を抜けて、甲佐町に入り、遠景の山の形を確認しながら南へ走って、田口橋で緑川を渡り、
坂を少し上ったところ辺りが撮影ポイントだったらしい。
同じ季節に同じ場所を撮った写真なのに、カメラも腕前も撮影時刻も違うのでイメージが随分違ってしまったけれど、写真集のものでは白いビニールで包まれた俵が畑のあちこちに転がっているのが大事なアクセントになっている感じ。 さて、この、作物を白いビニールで包んだようなものは、穀物を採った後の残りを「燃えるゴミ」として出すためのものとばかり思っていたら、正式には「ロールベールラップサイロ」というものらしい。
Wikipediaによれば、「ロールベールラップサイロ」は円筒状(タイコ形)に梱包した牧草をラップして乳酸発酵させて貯蔵する手段で、牧草を大型機械(ベーラーなど)でロールベール(2m程度の円筒形)に整形、ポリエチレン製の幅広のラップで巻き上げて仕上げる。
省力化が図られることから、日本では従来のタワー型サイロシステムに代わり一般化した作業体系であり、採草地や農家の周辺にラップされたサイレージが積み上げられる光景も珍しくなくなった。
乳酸による牧草の発酵を効率的に行うためには、嫌気的な条件での発酵が不可欠であるけれど、単にラップで巻き上げただけでは通気性が生じ発酵が進まず、良好なサイレージが得られない。このためラップの製造会社では、ラップを複層構造にする、粘着材の改良、突き破りを防ぐ強度の向上など、さまざまな工夫を凝らしている。さらには発酵を補完するためにギ酸などを添加し、腐敗を防ぐ工夫も見られる、とのこと。
ともあれ、この発酵した牧草は、日本人で例えるならば、まさに「お漬物」のようなもので、これがあると家畜の食欲が旺盛になるそうで、牧畜にはなくてはならないものらしい。
わたしめには「サイロ」と言われると、同じ名前の某焼き肉屋の建物のようなものや、
あちこちで見かける筒状のものが馴染みがあるけど、
これらのタワー型サイロはメンテナンスなど結構大変なんだそうで、最近は、手軽な「ロールベールラップサイロ」の方に取って代わられてしまっている、とのこと。 甲佐の田舎の新たな形式の「サイロ」を写真に収めた後は
再び緑川を渡って帰ったとさ。
本日の走行距離:34.4㎞