くまもと自転車紀行

熊本市およびその周辺を走行した記録や装備・メンテなど、自転車にまつわることがらを中心としたブログです

『例のポンプ』はどうして凄いのか?

このところポンプのネタが続いて恐縮だけど、今回は携帯ポンプの話。

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先月、矢部に行く途中、2回も続けてパンクして、2度目のチューブ交換の後に空気を入れる時には、汗は出るわ、大胸筋は攣りそうになるわで、100psiくらいは空気を入れたいのに、70psiくらいで疲れて白旗を上げてしまった。 その時に携帯していたポンプはLezynのスタイリッシュなポンプなんだけど、空気を入れる時に体重をかけられないこともあり、わたくしめの腕の力だけでは70psiくらいから先はかなり苦労するのだ。

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(確かWiggleで一万円くらいした。)

もっと楽に空気が入られられる携帯ポンプはないものかとネットで調べていたら、『例のポンプ』と呼ばれる携帯ポンプが話題になっていた。 それは中国製のポンプで、OEM(委託者商標による受託製造)されており、「Oture」、「PRO STAR」、「BLACK BIRD」などの製品名がついているため、ネットでは一括して『例のポンプ』と呼ばれているらしい。 アマゾンで調べてみると、確かにカスタマーレビューでも評価も高いので、「Oture」のブランドの携帯ポンプにお助けチューブ(連結チューブ)、パンク修理キットなどがついて、セットになっているものを1800円でゲット。

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早速ためしてみるが、付属の「お助けチューブ」は両端とも米国式なので、仏式のチューブに空気を入れる場合はアダプターが別に必要。

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そして、空気を入れてみると、あーら不思議!スコスコと3分ほど空気を入れると多少は力が必要になってくるものの、これまでの携帯ポンプに比べるとはるかに楽に110psiくらいまで空気を入れることができた。

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ネットの評価で「これまでの携帯ポンプをすべて過去のものにしてしまう」というような表現が決してオーバーではないと感じさせるほど楽チンである。 そして、例によって、「どうしてなんだろう?」と好奇心が湧いてきて中を覗いてみると・・・。

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このポンプの構造および仕組みについては、「サイクルベース名無し」に掲載されたbaruさんの記事が詳細に及んでいる。 その記事の中の構造図を参考にして仕組みを説明すると、このポンプは結構複雑な構造になっており、

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分解すると二重の筒状構造になっている。

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まず、外筒部分を引っ張ると、内筒と外筒の間の空間にあった空気が内筒を経由して押し出されようとする。

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次に外筒部分を押し込むと、内筒内の空気が押し出されようとする、

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という風になっている。 つまり、取っ手を引っ張る時も、押し込む時も、どちらも空気が押し出されようとする仕組みになっている。 では、どうして、高圧でも楽に入られるか? それはパスカルの原理である。

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「例のポンプ」の外筒の内径は他の携帯ポンプとほぼ同じ約20㎜。そして内筒の内径がその半分の約10㎜。 よって圧力のかかる部分の面積の比率は以下の図のようになる。

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パスカルの原理により圧力は面積に比例するので、通常の携帯ポンプの4分の1の力で内筒の中の空気を入れることができ、4分の3の力で内筒と外筒の間に貯まった空気を入れることができる。 実際にチューブに空気を入れると、ある程度の圧以上になってくると、取っ手を引く時にはチューブ内には空気は入らず、baruさんの説明のようにポンプ内筒内の空気圧を挙げるのにとどまるものと思われる。 以上、簡単に言えば、「例のポンプ」は二重の筒状構造により同じ大きさの携帯ポンプに比べてかなり少ない力で同じ圧の空気を入れることができる優れものなのだ。

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あと、危惧される問題としては、通常の携帯ポンプと比べて構造が複雑なだけに、メンテナンスの問題(取扱説明書には3か月毎の注油を推奨)と耐久性でしょうかね。

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