くまもと自転車紀行

熊本市およびその周辺を走行した記録や装備・メンテなど、自転車にまつわることがらを中心としたブログです

アロンガメント・ジナミコ

『パラダイム・シフト(英: paradigm shift)』という言葉がある。 ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること・・・すなわち社会の規範や価値観が変わることである。

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人類史上、最大のパラダイム・シフトは天動説から地動説への変換と言われている。 それほど劇的なものではなくても、先週の水曜日(2月18日)午後8時からのNHK「ためしてガッテン」をご覧になった方は少なからず「パラダイム・シフト」を感じられたのではなかろうか?

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その内容を、かいつまんで紹介すると・・・ 多くのスポーツで、準備運動としてストレッチングを行うが、これは1975年のアメリカ人のボブ・アンダーソン著書が世界的に広まったもの。

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心拍数をあげることなく、呼吸をしながら筋を伸ばす「静的ストレッチング」により、柔軟性の向上などには効果を上げた。ケガの予防にも効果的とされ、多くのスポーツに取り入れられ、世界中に広まった。 ところが1998年に、静的ストレッチングのケガ予防効果を否定する論文が発表された。 その研究では、オーストラリア陸軍に新規入隊した男性1538人を2つのグループに分けて、一方は「コントロール(対照)」となるグループでストレッチングを行わず、もう一方のグループでは、担当者の指導・監視のもとに静的ストレッチングを実施。3か月間の厳しい訓練期間中の下肢の筋・骨格系の故障の状況を調べた。 その結果、ストレッチングなしのコントロールグループに比べ、ストレッチングありのグループとでは下肢の故障の状況に統計学的な有意差を認めず、「静的ストレッチングは下肢の故障の予防には効果がない」ことが示唆された。 番組では、さらに、過度の静的ストレッチングが筋力の低下を起こし、ケガの予防どころか、足関節の捻挫などを助長した例(熊本在住のジャズダンスを趣味とする女性)を報告。

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また、北海道の大学の男子バスケットボール選手5~6名に静的ストレッチングをさせ、前屈の柔軟性は増す一方、垂直跳びのジャンプ力は平均15%ほど減弱した実験を提示した。 一方、ブラジルではサッカーの準備運動として、「アロンガミント・ジナミコ(アロンガメント=ストレッチング、ジナミコ=動的)」という身体を動かしながらの文字通り「動的ストレッチング」を行っていることを紹介。

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(かつての日本代表ロペスが坊主頭になっとった)

具体的に言うと、関節可動域の80%程度の運動を繰り返し行う事により筋肉への血行を促し、柔軟性の向上のみならず、筋力をアップすることによってケガの予防にも繋がるという訳。 ちなみに、「アロンガメント・ジナミコ」は、日本のサッカー少年には「ブラジル体操」と呼ばれて馴染みのあるウォーミングアップ法で、すでに多くのチームで長年に渡り取り入れられている。 また、広島カープの前田健太投手がイニング間に行う、「マエケン体操」も「動的ストレッチング」である。

後半、番組では、転倒予防・肩コリ解消・腰痛解消のための各々の動的ストレッチングを『ふりふりストレッチ』として紹介した。

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以上が番組の概略であるが、さて、自転車運転時のストレッチングに関してはネットで調べると、日本では事前の静的ストレッチングを薦めているサイトがほとんどであるのに対し、欧米では、事前の動的ストレッチングと事後の静的ストレッチングを推奨しているサイト(その一例)が多い。 レース指向のサイクリスト向けの動的ストレッチ法が、Youtubeにいくつかアップされている。

(故障を防ぐ動的ストレッチ)
(腰周辺の安定性をアップする動的ストレッチ)

ただし、わたしのようなポタリング系のサイクリストには動的ストレッチングを兼ねて最初の5~10分間を一定のペダリングを心掛けてやや低速で走行することと、休憩時の静的ストレッチングが薦められている。 実際、ロングライド時の休憩中に肩や腰回りのストレッチングをすると、肩のコリや腰のハリが一挙に消えてなくなるのを経験する。 ちなみに、日本サイクリング協会が薦める静的ストレッチングは以下の通り。